お葬式のとき、故人の遺影の傍らに置かれる白木のものや、お仏壇の中に安置されているお位牌。
お位牌には何が書かれていてどのような意味があるのでしょうか。身近にありながらそもそもに役割や意味についてご存じの方は少ないように思います。本篇にて位牌についての基本的な枠割や意味について易しく解説します。
位牌とは何か?
位牌とは故人の戒名や亡くなった年月日、俗名などを記した木の札のことです。
葬儀の時には祭壇に配し、葬儀の後は自宅やお寺に安置します。お坊さんによって故人の魂が位牌に込められます。開眼供養などといって読教による儀式で行います。
簡単に言うと位牌とは『故人の魂をお祀りして、手を合わせて故人を供養するためのもの』です。
白木位牌と本位牌について
葬儀から四十九日までの間は仮に作る白木の位牌を用いて、四十九日の忌明けに本位牌(ほんいはい)を準備して仮位牌と入れ替えます。入れ替えの際にはお坊さんが魂を仮位牌から本位牌に移す儀式を行います。
そうして魂が抜かれて役割を終えた白木位牌はお焚き上げされます。通常は坊さんがお寺に持って帰ってくれるか葬儀屋さんがお焚き上げの手配をしてくれます。(最近は家に残されることが多くなってきていますので両者に確認してみてください)。
白木位牌の捨て方についてはコチラ
本位牌は漆塗りの「塗り位牌」や、黒壇や紫壇などの高級木材で作った「唐木位牌」、最近ではモダンなインテリアに合わせたデザイン性の高いものもあります。仏壇を置かない(置けない)家も多くなり、一見して位牌と分からないような単独で置いても違和感の無いような形状のものも多くなってきました。
■本位牌の主な種類
・塗り位牌:漆塗りや金箔、金粉などが施された黒塗りの一般的な本位牌。
・唐木位牌(からきいはい):黒壇や紫壇などの高級木材を使用して作られる位牌。
・繰出位牌 / くりだしいはい:複数の位牌がある場合、一つに纏められる構造の位牌。
・モダン位牌:洋風の仏壇や仏具などにも映える現代的なデザインの位牌。
なぜ仮の位牌があるのか?
人が亡くなる前から亡くなった後のことを準備するのは良くありません。そのため故人の為だけに急にしつらえるため仮の役割のもので一旦お葬式などを進めることになっています。
忌明けの四十九日が過ぎれば気持ちも落ち着いて故人を弔う用意も本来のものに整えられるという流れになっています。ということで四十九日の法要後は、仮の白木位牌が本位牌となり、冥福を祈る場所も、遺骨を置いた仮の祭壇から、位牌を安置した仏壇に変わります。
白木の位牌がそのまま保管してあるといったことも聞きますが、の役割を終えたお位牌は感謝の気持ちを持ちつつ、お焚き上げ処分するのがお勧めです。最近では魂抜きをしたけど捨てられず本位牌を手元にもっているというお話をよく聞きます。これは悪いことではなく生きている人が故人を想いつつ、あとに面倒をかけないための安心を得るという意味では、逆に今のライフスタイルにマッチしている良いことなのかも知れないと筆者は思います。宗教的には「バチが当たるような悪いことではない」とお坊さんには確認しました。
※浄土真宗は位牌を用いません。亡くなると仏様の導きですぐに成仏できるという「往生即成仏」の教えからお位牌を用いません。
位牌のルーツとその役割
位牌は遠い昔の中国から伝わってきたとされています。そのころ中国の儒教では先祖の官位や名前を「木簡(もっかん)」と呼ばれる木の板に書いてお祀りし供養したと伝えられていて、この「木簡」が位牌のルーツではないかと言われています。意外にも仏教(インド)がルーツではなく、儒教(中国)の影響を受けているそうです。
日本の禅宗僧侶が鎌倉時代に儒教の影響を受けてお位牌をお祀りする儀礼を始め、今の仏壇を家庭内に置くスタイルとともに江戸時代から庶民にも広まったのではないかと考えられています。
位牌には何が書いてある?
位牌には故人の戒名、俗名、亡年月日、亡くなった年齢などが記されています。
●戒名(法名、法号)
戒名とは亡くなったとき仏様の弟子になった証としてお寺からもらう死後の名前です。
戒名の付け方は宗派や故人の年齢、性別、社会的地位などによっても異なります。例えば社会的貢献度やお寺への貢献度が高い方には戒名の前に院号・院殿号といった称号があり、真言宗、日蓮宗、浄土宗では戒名の前に宗派を表す梵字・冠文字を入れるケースがあります。
●俗名
生前に使用していた名前です。通常は戒名を表面に記して俗名は裏側に記されます。
●亡くなった年月日
昭和、平成などの元号を用いて記します。
●亡くなった年齢
数え年齢が一般的です。漢数字で記します。
まとめ
・位牌とは故人の戒名や俗名などが書かれた木の札で、故人の魂をお祀りして供養するためのものです。浄土真宗では位牌は用いず、法名軸や過去帳を仏壇に安置します。
・位牌は、古くは中国儒教で用いられた「木簡(もっかん)」が由来とされ、鎌倉時代に日本に伝わり江戸時代に今の供養を目的としたお位牌のスタイルが広まりました。
・位牌にはお寺からもらった戒名(法名、法号)や俗名、亡年月日、年齢が記されており、戒名の付け方は宗派によって異なります。
・現在ではライフスタイルの多様化から様々な形態の位牌があります。供養のスタイルも千差万別になってきていますので、どのようにご先祖様や故人をお祀りし供養していくのか、子供たちにどのように継承していくのか、是非この機会にお考えになってみてください。
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